反物語主義

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「無題」

 前回に引き続き、夏目漱石の「夢十夜」に強く影響を受けている作品。第三夜の雰囲気を意識して書いた。導入などは、完全に本家を踏襲している。たしか去年の秋頃に書いたものだ。

 私が実際に見た夢を題材にした。普段の私は、眠りが深いのかほとんど夢を見ない。時折、積極的に夢を創作に活用しているような作家がいるが心底羨ましい話である。

 

 この日見た夢は記憶に残るほど奇妙なものだった。夢の中で私は何らかの「予感」を得る。するとしばらくして、夢もその「予感」の通りの展開になるのだ。感覚としては「未来予知」をしている状態に近い。

 もっとも、今思えばそれほど不思議な話でもない。夢が睡眠中の脳の動きの副産物ならば、無意識で私が考えた事が夢として直接出力されたとしても別段おかしいことはないだろう。

 ただ、私が「考え」さえしなければ夢の中の少年が死ぬこともなかったのかもしれない、そんなことを思うとなんとも後味が悪い気分になった。

 小説でもその奇妙な感覚を表現したかったが、どうしても説明的になってしまったためカットした。十分に書きたいことが書けず悔いの残った一作である。

 

 冒頭にも書いた「傘を差すか迷うほどの雨」は私のお気に入りのモチーフで、意識していないとすぐに作品内でこの天気にしてしまう。おかげで私の作品は気がつくとどれもこれも灰色のイメージになってしまうのだ。

 表現の幅を広げなければ……。